1956年のメルボルン・オリンピック。西ドイツのマラソン選手、パウル・アヴァホフ(ディーター・ハラーフォルデン)は、見事な走りで金メダルを獲得。第二次世界大戦の敗戦後、暗く重い空気に覆われていた祖国に明るい希望をもたらし、国民的英雄となった。だが、それも今は昔。すっかり年を取って隠居生活を送っていたパウルは、愛妻マーゴ(ターチャ・サイブト)の体調不良により、やむなく老人ホームに入居する。だが、窮屈な施設の対応に満足できないパウルは、生活を変えるためにトレーニングを開始。ベルリン・マラソンへの出場を宣言する。マーゴも夫の現役時代を思い出してサポート役に復帰。当初はパウルの挑戦を呆れ顔で見ていた入居者たちも、かつての彼の勇姿を思い出し、それぞれの1956年を振り返る。当時、西ドイツの人々が彼の活躍でどれだけ救われ、勇気づけられたか……。大会まで8週間。二人三脚でトレーニングを続ける2人に影響された入居者たちは、応援団を結成。だが、施設への不満を募らせたパウルは、マーゴを連れて飛び出し、キャビンアテンダントとして働く一人娘ビルギット(ハイケ・マカシュ)のマンションに転がり込む。やがて、パウルの挑戦をテレビや新聞が取り上げるようになると、一躍時の人に。選手登録も無事に完了。大会に向けてトレーニングも順調だった。ところが、久し振りの充実感を味わっていた2人を、突然の不幸が襲う。マーゴが余命わずかと宣告されたのだ。パウルが全戦全勝のマラソンランナーに成長できたのは、献身的なマーゴのサポートがあってこそ。最大の理解者を失って動揺するパウルを、施設は“老人性うつ”と診断。自由に走る事すら許されない状況になってしまう。ドイツ中の人たちに夢と希望を与えたパウルの挑戦の行方は、果たして……?