2011年3月、福島第一原発の事故の深刻さが明らかになるなか、本作監督の坂田雅子は、亡き母・静子が遺した1冊の本を手に取る。『聞いてください』と題されたその本は、1977年から母が続けていた原発を問うミニコミ紙をまとめたものだった。フランスの再処理工場近くに暮らす姉・悠子からの1通の手紙をきっかけに反原発運動を始めた母は、最期まで原発のことを気にかけていた。そして、福島の事故が起こったのだ。雅子は2世代にわたる想いを胸に、兵器と原発という二面性を持つ核エネルギーの歴史をたどる旅に出る。フランスの核再処理施設の対岸の島に暮らす姉を訪ね、大規模な核実験が繰り返されたマーシャル諸島で故郷を追われた島の人々に出会い、カザフスタンでは旧ソ連による核実験で汚染された大地で生きる人々を見つめる。