トルコのカッパドキアに佇むホテル・オセロ。イスタンブールで舞台俳優として活躍したアイドゥン(ハルク・ビルギネル)は、資産家だった父の死をきっかけに引退し、若く美しい妻ニハル(メリサ・ソゼン)と妹ネジラ(デメット・アクバァ)と共にホテルのオーナーとして暮らしていた。ホテルの他にも店舗や家を持ち、膨大な資産の管理は弁護士や使用人に任せる、人も羨むような裕福な生活。そんなある日、彼が運転していた車に道端から石が投げ込まれる。犯人の少年は、アイドゥンに家賃が払えず、家具を差し押さえられたイスマイル(ネジャット・イシレル)の息子だった。不遜な態度でアイドゥンに恨み言をぶつけるイスマイル。イスラム教の聖職者であるイスマイルの弟ハムディ(セルハット・クルッチ)がとりなしたものの、両者は一触即発の状態に。翌日からハムディは、許しを請うため、時には1人で、時には甥を連れてアイドゥンの元を訪れるが、両者の想いはすれ違うばかり。その一方で、地元の新聞に連載しているエッセイが好評なアイドゥンは、自らの経験を活かした本の執筆を目指していた。だが、離婚して出戻ったネジラは、そんな彼の才能を批判する。やがて冬の訪れとともに宿泊客が去ると、まるで時が止まったかのようなホテルで溝を深めてゆくアイドゥンとニハル。自分では働かず、裕福な夫の資産をアテにした慈善活動を生き甲斐にするニハルは、アイドゥンからの協力の申し出を頑なに拒否。やがて、妻を残してイスタンブールに向かうことを決意するアイドゥン。その行く手を、激しい雪が阻む。夫が去った後、イスマイル一家の元へ向かうニハル。困窮する彼らへの援助を申し出るが、イスマイルはそれを拒絶。一方、大雪で足止めを食らったアイドゥンは、旧友の農場を訪れる。友人たちとしたたかに酒を飲み、議論を交わしながら一晩を過ごした彼は、再び雪の道を辿り、妻の元へ戻ることを決意するのだった。