福島第一原発から12キロにある福島県双葉郡富岡町。2011年の原発事故直後、全町避難となったこの町には腹をすかせた犬猫や、家畜があふれていた。そんな場所に一人残った55歳の松村直登は、動物たちに必死にエサを与え続ける。その後、犬猫は動物愛護団体に救出されたが、ほとんどの牛や家畜は殺処分された。殺処分を拒否した畜主から預かった牛たち約30頭を預かり、面倒を見始めたナオト。だが彼は畜産家でも動物愛護家でもなかった……。高校卒業後、ナオトは建設業の仕事に就き、福島第一・第二原発の建設にも関わった。その後、東京近郊で出稼ぎとして働いたが、バブル崩壊後は仕事が減り、富岡町の実家に戻ってくる。原発があることで地元は潤い仕事も増えたが、妻と子どもは家を出て行った。年老いた両親と暮らす中、原発事故が発生。日常は一変し、人の人生をカネで解決しようとする不条理に納得できないナオトは、ひとりここに残ることを決める。電気も水道もない無人の町で生きるナオトの圧倒的な孤独を救ってくれたのは、同じく町に置き去りにされた動物たちであった。ダチョウ、牛、猫、犬、イノブタ、ポニー……。子猫が生まれる一方で、命を全うしていく牛もいる。生きること、生かし続けること、その日々の闘いがナオトの新たな生きる道となる……。