シュルレアリズム作家として評価された近代メキシコを代表する女性画家フリーダ・カーロ(1907-1954)は、不自由な身体やメキシコ近代化の荒波に翻弄されつつひとりの女性として力強く生きたその人生においても世界中の人々の共感を呼んでいる。2004年。死後50年を経て、バスルームに封印されていた数百点の遺品が遺言によって姿を現す。そして2012年、メキシコ人キュレーターの発案によりその遺品を撮影するプロジェクトが立ち上がり、世界的な写真家・石内都に撮影を依頼。メキシコシティにあるフリーダ・カーロ博物館《青の家》を訪れた石内の前に、フリーダのアイデンティティを支えた伝統衣装やアクセサリー、絶え間ない身体の痛みを想起させるコルセットや医薬品等、膨大な数の遺品が一つ一つ並べられていく。カメラは、3週間に亘る石内都の創作過程に密着。写真家が遺品を見つめ、これまでのイメージから解き放つようなフリーダ・カーロ像を写真として発見していく過程を捉え、さらに遺品の背後に広がるメキシコの風土、引き継がれる伝統、現在を生きる女性たちの姿をも映し出していく……。