敗色濃厚な太平洋戦争末期。爆弾を抱えた零戦で、アメリカの軍艦に体当たり攻撃を命じられた若者たちがいた。生きて帰ることのない“神風特別攻撃隊=カミカゼ”と呼ばれた若者たちだ。茨城県笠間市に存在した戦闘機の教育訓練部隊“筑波海軍航空隊”でも84名の若者が沖縄戦のための特攻隊に編入され、60名が亡くなった。その中心は、学徒出陣のために大学を中退し、特攻隊に志願した若者たち。“お国のために”命を投げ出すしかなかった時代の空気の中での志願だった。戦後70年を経て戦争経験者の高齢化が進み、その体験を語る機会が失われつつある。本作では、戦争の終結によって生き残った元特攻隊員の証言を集め、その素顔を探ることによって彼らが経験した戦争の真実に迫る。筑波海軍航空隊の司令部庁舎など、当時の建物が現存する笠間市では、地元の人々によって戦跡の保存や資料収集など、町に刻まれた戦争の事実の掘り起こしが行われている。自分たちの町で飛行訓練を行い、出撃していった特攻隊員たち。これまで語られることのなかった彼らの想いに耳を傾け、知られることのなかった事実を調査し、次世代にどう伝えていくのか。地元の人々の熱い想いと丁寧な取り組みが、本作に結実した。