水草を追う原始民のように、小さな田舎町から田舎町へと興行を続けて行く見せ物の一座があって、ニフティー・ミラーはその客引きであった。妻は既に死に、一人息子のクリスが法律学校を卒業するのを楽しみに余り高尚ではない職業を厭はしいとも思わないで暮らしているのであった。彼は一座の踊子キャリーの愛にほだされて、淋しい旅路の相手にしていたが、やがて、息子のクリスが勝手に学校をやめて、一座に働くようになってから、ニフティーは息子の手前や将来を考えて、キャリーと切れることにした。キャリーは心からニフティーを愛していたので、思慮の浅い情熱的な女の常として、ニフティに復讐を企てた。彼女は一座の若い花形ルーを買収して、クリス青年を誘惑させるうち、クリスに取ってルーは忘れることのできないものになり、クリスは世間なれない純真な青年のこととて一途に彼女に結婚を申し込んだので、ルーは悔悟して、彼に万事を告白し、2人は父親に告げに来た。ニフティーは期待を裏切られて、怒りの余り2人を勘当し、永年一緒にいた一座とも別れて自爆自棄の放浪を続けて行く。しかし、暫くして、彼は本能的に引きづられて元の一座の所へ来るが、無茶な生活に疲れ果てていたので昏倒してしまうのをキャリーに救われる。クリスはシカゴのある法律事務所に働くことになり、赴任に先立ってルーと2人で父親に告げに来た。ニフティーは再び客引きとして、疲れた身を一座の木戸に立ったが、息子の幸福そうな様子や、明るい将来のことを考えて、世の中も仲々悪くはないと考えるのであった。