咽頭がんで声と仕事を失い、人生を見つめ直した佐々木宏(佐野和宏)は、長年連れ添った妻・晴美(円城ひとみ)と2人で穏やかな時間を過ごしていた。晴美との会話は筆談ながら、互いに顔を見れば言いたいことは伝わる、そんな日々の繰り返しだった。ところがある日、宏の幸福な日常を根底から覆す事件が起きる。それは、娘の久美子(芹澤りな)から、自分は誰の子かと詰問されたことから始まった。宏と晴美の血液型が、久美子の血液型と合わなかったのだ。青天の霹靂のような事実に大きな衝撃を受け、激しく動揺する宏。これをきっかけに生じた晴美への疑念。さらにそれは嫉妬と憎悪に変わり、やがて妄執へ……。叫びたくても声が出ない、届かない。愛を求め、確かめようともがく男の淫靡で孤独な旅が始まる……。