日雇い労働者の街、大阪市西成区釜ヶ崎で38年続く子どもたちの憩いの場“こどもの里”。“さと”と呼ばれるこの場所では0歳からおおむね20歳までの子どもを障がいの有無や国籍の区別なく無料で受け入れている。地域の児童館として学校帰りに遊びに来る子や一時的に宿泊する子、さまざまな事情から親元を離れている子だけでなく、子どもの親たちも休息できる場としてそれぞれの家庭の事情に寄り添いながら、貴重な地域の集い場として在り続けてきた。代々の子どもたちから“デメキン”というあだ名で呼ばれている館長の荘保共子さんは時に厳しく、しかし何があっても子どもたちの味方であり続けている。そんなある日、やんちゃな5歳のマサキくんがこどもの里にやって来る。自転車が大好きなマサキくんだが、発達障害があり、自分でやりたいと思う事に集中すると周りが見えなくなってしまう。そんな彼に時々イライラしてしまう母親は、しんどくなって手を上げることを避けるため、こどもの里にマサキくんを預けに来たのだ。自身の育った環境による苦しみを抱えている母親はカウンセリングを受けているが、そんな彼女に対してもこどもの里の職員たちが支えているのだった。生意気盛りな中学生・ジョウくんは、こどもの里のムードメーカー。彼がいると周りが賑やかになるが、時に騒ぎ過ぎて怒られることもしばしば。ジョウくんは、軽度の知的障がいがあることにコンプレックスを抱き、学校の交友関係でも悩んでいた。その苛立ちから兄弟に暴力を振るってしまうことも。こどもの里の職員たちはジョウくんと彼の家族を丸ごとサポートし、彼の将来も共に考えていこうとしていた。高校生のマユミちゃんはおっとりした性格ながら家事もこなす優等生。小学生の頃からこどもの里で生活してきたマユミちゃんだが、離れて暮らす母親は健康や対人関係に困難を抱えている。就職も決まり、高校卒業を目の前にしたマユミちゃんにある事件が発生。焦燥するマユミちゃんを職員たちは強く励まし、優しく包み込むように接する。そんな中、館長の荘保さんがくも膜下出血で入院してしまう。屋台骨の不在に職員だけでなく施設全体にも動揺が広がっていく。やがて春、マサキくんは小学校入学、ジョーくんは中学校卒業、マユミちゃんはこどもの里からの卒業、それぞれが人生の門出を迎える……。