本作は、北海道に暮らす監督の父と母、年老いたやさしい祖母、気心の知れた兄、そして岡本家の長女であり妹である監督自身の姿を記録したセルフ・ドキュメンタリーである。時折、彼女が幼いころに撮影された思い出のフィルムを残像のように挿入しながら、淡々と映し出される現在の彼ら。今、岡本家は全員ばらばらに暮らしている。そこにはそれぞれの痛み、憎しみ、別れ、そして自立があった。それを現実として知りながらも、そうならなくてはならなかった時間の積み重ねを実感するには彼女は幼すぎた。いちばん近くにいたはずの人たちは、あの幸福に思えた時間との距離をどう考えているのか、それは彼女にとっての、いちばん愛しいはずなのに素直に向き合えなかった人たちとの対話でもあると思えた。