昭和55年、冬。銀行勤めの長女・いずみ(佐藤仁美)は、母・イト(宮崎美子)と暮らしていた。結婚式を明日に控えた夜、イトはこの家から娘を嫁がせたいという亡き夫・誠志郎(小市慢太郎)の願いを初めて口にする。さらに誠志郎から受け取った愛と今なおあふれる思いを語るイトの言葉に、いずみの目から涙がこぼれる。誠志郎は生前、料亭・楽寿亭の離れ屋敷に開かれた石川塾の二代目を担っていた。母・イト、いずみ、妹のかえでとともに一家四人で仲良く暮らしていたが、誠志郎が突如亡くなり、イトは内職をしながら女手一つで娘二人を育てあげた。一方いずみは父に代わって一家を支えようとし、家を出ることができなかった。結婚式当日。挙式は、再開発のため取り壊されることになった楽寿亭で行われた。花嫁のいずみとともに、振り袖姿の妹・かえで(中西美帆)が現れる。かえではシングルマザーとして働きながら子どもを育てていた。二人の娘の美しい姿を見つめるイトの心に、かつて家族四人で過ごした日々が鮮やかに蘇ってくる。