古都・京都。伝承工芸である截金職人の父(田中壮太郎)と、小料理屋の女将の姉・五月(佐津川愛美)のもとで生まれ育った赤田孝豊(高杉真宙)は、どこにでもいるような平凡な17歳の高校二年生。孝豊と同じクラスの公平(清水尋也)は、バンド活動のため学校は休みがちだった。模擬テストの日、偶然出会った公平に誘われるがまま、烏丸丸太町にあるライヴハウスを初めて訪れた孝豊は、今まで見たことのない公平の姿を見る。その帰り道、鴨川に飛び込み、二人はズブ濡れになりながらはしゃぐ。それから数日後、オーナーから訳あってライヴハウスを閉じることを聞いた公平は、突然学校を辞め、東京に旅立っていく。五山送り火の夜、瓦の上で大の字に寝ていた孝豊は、幼なじみのみこと(葵わかな)から塗りの器を受け取り、そこに入った酒に燃える大文字を映して飲み干すのだった……。夏休み。一日30個の英単語を覚えることを決めた孝豊は、早朝から学校の教室で勉強をしていた。ある日、夜まで寝てしまった彼をみことが迎えにやってくる。どこか気味の悪い夜の校内、鼻歌交じりの宿直のおっちゃんに見つかるまいと隠れる孝豊とみこと。眩しいぐらい明るい満月の存在に気付いた二人は、その月を見ながら宇宙について、ちっぽけな自分たちの存在について語り始める。その後、しばらく黙って月を眺める二人。その場を立ち去ろうと、孝豊がみことの手を取ろうとした瞬間、二人のあいだに静電気という名の不思議な悪戯が起こる……。みこととの下校中、孝豊の前に現れた同級生の不良・小島(金子大地)。二人にちょっかいを出す彼に対し、何もすることができない孝豊。そんな情けない姿を見たみことは、不機嫌になり先に帰ってしまう。後日、ほかの生徒にちょっかいを出す小島の姿を見た孝豊は、雨が降りしきるなか、その昔、自分の父親が愛する女性を守るために数人の極道相手に喧嘩したという話を思い出す。孝豊は小島を追いかけ、彼に向かって「喧嘩しよか」と声をかける。取っ組み合いをし、ボロボロになった孝豊の前には、みことの笑顔があった。そして、帰宅した孝豊の顔のアザを見た父は、初めて彼に截金をやることを勧めるのだった……。