売れない女優・下村レイコ(つみきみほ)は、俳優スクールで教えながら芝居を続けていた。そんな彼女のもとに、学生時代の劇団仲間で、今は人気俳優となった三田大輔(眞島秀和)から映画出演の話が舞い込む。レイコは突然のチャンスに舞い上がるが、母のユキエ(田島令子)から電話がかかってくる。ユキエは、昔飼っていた犬のチロが時々帰ってきて困惑していると言う。ユキエはレビー小体型認知症を発症し、チロの幻視に悩んでいるのだ。レイコはユキエを一人にするわけにはいかず、母親を連れて監督と作品出演の面接に臨む。監督の山本(木乃江祐希)はベビーカーを押しながら現れた。子どもを産んで間もない女性監督の山本は、「子どもをイイワケにしたら負けだと思って」と言う。彼女に触発されたレイコは、映画出演と母との生活を両立させようとする。しかし、早速ユキエが風邪薬の副作用で発作を起こす。さらにスニーカーを買おうとショッピングセンターに出かけたユキエが騒ぎを起こし、レイコのリハーサル中に警備員から連絡が入る。レイコは母の発病で演技に集中できず、自身の在り方に中途半端さを感じ、万事休すと止める監督たちを振り切って撮影現場を立ち去る。そんな折、母はチロについて意外なことを打ち明ける……。