紀伊半島南端に位置する和歌山県太地町は古式捕鯨発祥の地として知られ、400年前から捕鯨を伝統と誇りにしてきた。2010年、地元で昔から行われているイルカ漁を隠し撮りなどによって撮影し、批判的に描いたドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」がアカデミー賞を受賞し、この人口3千人あまりの町が 突然世界の注目を集めた。血で染まる真っ赤な海の映像は世界中に衝撃を与え、以来、太地にはイルカ漁に反対する海外の活動家が大挙して訪れる町となり、クジラとイルカを巡る国際紛争の最前線と化した。多い時には1日300通も送られて来る嫌がらせのFAX、ネット上で広がる太地への罵詈雑言、「ザ・コーヴ」以降も止まない海外からの圧力の数々。そんな絶望的な状況の中、太地を巡る論争を取材してきた一人のアメリカ人ジャーナリストが、真実を知るために太地町に降り立った。本作では2010年から2016年まで太地町にカメラを据え、太地の漁師と外国人活動家両方にマイクを向けて、クジラと共に生きてきた町が突如グローバリズムの大波に襲われ、生き残りをかけて試行錯誤する姿をとらえる。