2016年6月19日。沖縄県那覇市で米軍属による女性暴行殺人事件の被害者を追悼する県民大会が開かれた。この日集まった6万5千人を前に、古謝美佐子が「童神(わらびかみ)」を唄う。「雨風ぬ吹ちん 渡る くぬ浮世 風かたかなとてぃ 産子 花咲かさ」この歌詞をうけて稲嶺進名護市長は言った。「我々は、また命を救う“風かたか”になれなかった……」“風かたか”とは、風よけ、防波堤のことである。怒った沖縄県民は、嘉手納基地や高江北部訓練場など各地のゲートを封鎖し、全基地撤去を訴えるのだった……。2015年5月、防衛省は奄美、沖縄本島、宮古島、石垣島に「地対艦ミサイル」を新たに配備すると発表。南西諸島防衛の司令部も宮古島に作られる。候補地の一つとなった大福牧場には、地対艦ミサイル部隊など800人規模の自衛隊部隊の基地が計画されている。予定地は島の水源地の真上。大福牧場に最も近い福山地区では動揺が広がった。安心して暮らせないと訴える地元の母親たちが立ち上げたグループ「てぃだぬふぁ」が動き始める。メンバーたちが市役所前で座り込みを始めるとフェイスブックなどで繋がりが拡がっていく……。石垣島の真ん中にある沖縄県で最も高い山、於茂登岳のふもとにも陸上自衛隊ミサイル部隊の計画がある。近隣の開南、嵩田、於茂登の三地区は、石垣市と防衛省に配備反対を要請。2016年4月22日、防衛省は自衛隊配備について初めて住民説明会を開くが、市民の求める具体的な説明は何もなかった……。沖縄県民の8割が反対する辺野古の新基地建設。完成すれば弾薬庫と滑走路と軍港を備えた新たな出撃拠点ができる。つまり有事には真っ先に標的になるのである。現場では、陸では座り込み、海ではカヌー隊が工事を止めようとしている。3月4日は、島中で一斉に三線を奏でるサンシンの日。工事車両が入る早朝、ゲート前で三線の音が響きわたる……。高江の空は米軍ヘリの訓練場、森はゲリラ訓練場と化している。さらなるヘリパッドの建設をめぐって10年に及ぶ座り込みが続いていた。だが国から、ゲートを封鎖している住民の車両を撤去せよと警告が入る……。様々な伝統が息づく石垣島の夏は祭り一色。豊年祭の見所は、綱引きの前に行われる鎌を持つ農民と長刀を持つ武士との勝負。これは琉球王国の圧政と権力に屈しない石垣の人々の反骨精神を表している。於茂登の農家の娘、嶺井千裕さんが通う八重山農林高校の生徒たちが豊年祭で収穫の喜びを踊る。来年は大学に進む千裕さんにとって、島で過ごす最後の夏だった……。