映画監督の深山晄(大杉漣)は、中学時代の同級生・井川道臣(吉田栄作)の死を知り、数十年ぶりに故郷・北九州に帰ってくる。その胸に蘇るのは、数々の故郷の記憶と、道臣との懐かしい日々。紫川で泳ぎ、釣りをし、喧嘩に明け暮れ、大好きな映画館“小倉昭和館”に通い、銀幕のスター、赤木圭一郎に憧れて将来を語り合った。そして、映画監督を志した晄が、東京の学校に進学する際に交わした道臣との誓いの言葉……。晄は久しぶりに、昭和館の館主となった後輩の山口淳子(藤吉久美子)を訪ねる。道臣の思い出話と、北九州の未来について、時を忘れて語り合う2人。続いて晄が訪れたのは、年老いた母(佐々木すみ江)が1人で暮らす実家だった。母は、突然帰ってきた息子を温かく迎え入れ、互いのわだかまりは解消。久しぶりに親子の会話を楽しむ。晄と別れた道臣は、訳も分からず鉄砲玉としてヤクザを刺す事件を起こしていた。自首したものの、少年院帰りのレッテルを張られたことから、門司港の漁師の元へ。道臣の過去を問題にせず、受け入れてくれたのは、漁師の虎さん(中村有志)だった。そして、行きつけの食堂の娘・和代(石野真子)は道臣に好意を寄せ、2人は互いを意識し合うようになる。だがある日、和代の父が突然病に倒れる。憔悴しきった和代に、道臣は結婚を申し込む。和代との間に息子も生まれ、新しい家族と幸せな日々を送り始めた道臣は、自分の過去を振り返り、若者が道を間違えないで欲しいとの願いから“夜回り先生”を始める。そして、不幸な出来事は起こった……。義理と人情に厚く、昭和から現代まで、不器用だが熱く駆け抜けた道臣。その生き様を和代や虎さんから聞いた晄の胸に、“映画でもう一度、道臣と会いたい”という思いが沸き上がり、道臣を主人公にした脚本を書き始める。“映画の灯”を守ろうと頑張る淳子は、そんな晄に惹かれてゆく……。