1912年パリ郊外のジャンティイに生まれたロベール・ドアノーは、ルノー社のカメラマンを経て、フリーとして活動を開始。1949~51年、ヴォーグ誌の契約カメラマンとしてファッション写真や社交界を撮影。特にパリの庶民たちの日常をとらえた写真で高い評価を得る。なかでも『パリ市庁舎前のキス』は、1950年にアメリカの雑誌『LIFE』の依頼で撮影され、1980年代にポスターとして発売されると世界中に広まり、今では、愛<アムール>の国・フランスの象徴ともいえる写真となった。ドアノーの演出によって生まれたこの一枚が、誰もが憧れる恋人たちの都パリのイメージを創り上げたのであった。生涯を通して“パリの日常”をとらえた数々の名作をのこしたドアノー。街角に潜む“瞬間のドラマ”を職人技で釣り上げ、ときには演出によって“人生の真実”をより深く表現する彼の独自の写真哲学による撮影現場はあまり知られていない。本作は、撮影風景やインタビューなどの当時の貴重な資料映像や、親交のあった著名人による証言などから写真家ロベール・ドアノーの創作と人生を浮き彫りにしてゆく。また、ピカソやフランソワーズ・サガン、ロマン・ポランスキー、サビーヌ・アゼマ、イザベル・ユペールなど、ドアノーが撮った同時代を代表する著名人のポートフォリオ作品も映し出されている。