1950年代中盤のロックンロールに熱狂した若者たちはやがて大人になり、自らの文化に根づいた音楽を求め始め、60年代初頭、“モダン・フォーク・ブーム”が巻き起こる。伝統音楽に触発され、独自の詩を書き、政治的主張をギターに乗せて歌うそのスタイルは後に続く者たちへ多大な影響を与えた。その一人に過ぎなかったミネソタ出身の青年ボブ・ディランは、憧れのピート・シーガーやウディ・ガスリーを追い求め、ニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジへと向かう……。本作は、フォーク・ソングの歴史と代表曲、1962年にリリースされたボブ・ディランのデビューアルバムから65年の第5作「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」、そして同年発表のシングル「ライク・ア・ローリング・ストーン」まで幾多の名曲に秘められたエピソードを解明し、時代と共に変貌していくディランのフォーク時代に迫っていく。「風に吹かれて」「時代は変る」といった名曲とアルバムを時系列に追いながら、モダン・フォーク・ブームの渦中、ディランと共にグリニッチ・ヴィレッジの日々を過ごしたエリック・アンダースンやマリア・マルダー、トム・パクストンらシンガーたちが証言、ディラン研究の権威たちも独自のディラン論を披露する。