2ヶ月前に死去した父親の後を継ぎ、古びた小さな貨物船“広徳号”の船長となったガオ・チュン(チン・ハオ)。心のよりどころを失った孤独な文学青年である彼は、夜空に花火が上がる上海の船着き場で双眼鏡越しにひとりの女性を目撃する。さほど若くはないその女性は生活に疲れた様子だったが、ガオはなぜか胸のときめきを覚えるのだった。翌日、ガオは機関室で、一冊の手書きの詩集を発見する。「長江図」と題されたその詩集には、ガオの父親が20年前の1989年に創作した幾つもの詩が記されていた。年老いたベテラン機関士シアン(チァン・ホワリン)、若い船員ウー・シェン(ウー・リンポン)と共に上海を発ったガオは、江陰の港で新たな仕事を請け負う。それは希少種の魚らしき生き物を、長江のはるか上流の四川省宜賓まで運ぶという違法の仕事だった。その後、上海で見かけたアン・ルー(シン・ジーレイ)という名の女性と再会を果たしたガオは、招き入れられた粗末な家で彼女と身体を重ね合わせる。旅のさなか、次々と奇妙な体験をするガオ。荻港の仏塔ではアン・ルーに似た声の女性と導師の対話がどこからともなく聞こえてくるが、彼女の姿はどこにも見当たらない。銅陵では、いきいきとした様子のアン・ルーと一緒に、洪水で荒廃した村落を散策。再び愛し合った後、ガオは後ろ髪を引かれる思いで彼女と別れる。アン・ルーに関連するこれらの場所は、すべて「長江図」にその地名が綴られていた。ある夜、重労働に耐えかねたウー・シェンが日頃の不満をぶちまけた直後、長江に転落して行方不明となる。シアン機関士と航行を続けるガオだったが、三峡ダムを通過した頃からアン・ルーが「長江図」に書かれた場所に現れなくなったことに気づく。さらに、大勢の観光客で賑わう雲陽の張飛廟に立ち寄ったガオが船に戻ると、シアンが不可解な書き置きを残して失踪していた。ひとりぼっちになったガオは、涪陵の点易洞で石壁の修復作業に汗を流すアン・ルーと久々に対面する。ガオが話しかけると、以前よりもずっと生気に満ちあふれたアン・ルーは魅惑的な笑みを返す。行く先々で出会うごとに若返っていくように見えるアン・ルーは、本当に実在する女性なのか、それともこの世ならぬ幻影なのか。もはやそれさえも判然としないまま「長江図」に導かれるようにして、なおも長江を遡っていくガオ。やがてその行く手に、女学生のようにあどけないアン・ルー、そして広徳号と同型の真新しい船が出現するのだった……。