日本における精神医療の礎を築いた東京帝国大学医科大学教授精神科教授・呉秀三。当時精神疾患を抱える者は自宅の座敷牢に押し込まれていた状況を憂いた彼は、病者を病院で看るよう新しい法律の制定を目指し実態調査。1918年に「わが邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の他に、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」との一節を記した報告書『神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』を発表し、精神障碍者の治療と処遇の改善を訴え多方面に働きかけた。本作では、呉秀三研究の第一人者・岡田靖雄氏や座敷牢問題の調査研究を続ける愛知県立大学教授・橋本明氏、都立松沢病院院長・齋藤正彦氏ヘのインタビユーを軸に呉秀三の足跡を辿るとともに、座敷牢調査から100年経ってもなお偏見や差別の対象となる精神病をめぐる現状、そして人間の尊厳について問いかける。