パリ郊外の団地に暮らすマチュー・マリンスキー(ジュール・ベンシェトリ)は生い立ちに恵まれず、夢も持たずに生きてきた。彼には、近所の仲間に決して明かせない秘密があった。パリ北駅に置かれた1台のピアノを弾くことが、マチューの楽しみだった。ある日、名門音楽学校コンセルヴァトワールのディレクター、ピエール・ゲイトナー(ランベール・ウィルソン)がマチューの演奏に耳を傾ける。ピエールはマチューの才能に強く惹かれ、声をかけるが、マチューは逃げるように去ってしまう。その夜、マチューは仲間と盗みに入った先で逮捕される。実刑を免れないと言われたマチューに、ピエールが手を差し伸べる。コンセルヴァトワールでの清掃の公益奉仕を条件に釈放されたマチューに、ピエールはもう一つ条件を言い渡す。それは、“女伯爵”と異名を持つピアノ教師エリザベス(クリスティン・スコット・トーマス)のレッスンを受けることだった。反抗的なマチューにエリザベスも匙を投げかけるが、ピエールの熱意に動かされ、レッスンを続ける。ピエールは、4か月後の国際ピアノコンクールの学院代表にマチューを選ぶ。課題曲はラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番ハ短調』。3人の人生を賭けた戦いの先に待つものとは……。