2.8ヘクタールの畑で60種類もの野菜を育てる埼玉県三芳町の明石農園。明石誠一さんは、28歳の時に東京から移り住み、新規就農した。有機農法からスタートし、10年前からは農薬や除草剤、さらに肥料さえも使わない“自然栽培”に取り組んでいる。ここでは、野菜同士が互いを育てる肥やしとなり、雑草は3年を経て有機物に富んだ堆肥に変わる。収穫後は、種を自家採種していのちをつなぐ。春夏秋冬、地道な農の営みは、お百姓さんになりたい人への実践的ガイドとなり、“自分の口に入るもの”に関心を持つ人に、心豊かに暮らすためのヒントを提示する。明石農園には、パティシエやカメラマンなど、様々な経歴の人たちが研修生としてやってくる。その中から、農家として独立する人も出てきた。ノウフク(=農業福祉連携)にも取り組み、障がいを持つ人たちも得意分野を生かし、それぞれのペースで働いている。“都会の子に土に触れてほしい”と、農業体験イベントも開催。20代でも60代でも、障がいがあってもなくても、虫も植物も、土の上ではみんな同じいのち。土がつなぐ“いのちの営み”に、なぜ引き寄せられるのか。競争社会から共生社会へとシフトする、新しい幸せの物差しが“農”にある。