いまだ解決をみない内戦地シリア・アレッポ。ジャーナリスト志望の女学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホで撮影を始めるが、平和を願う彼女の想いとは裏腹に、内戦は激化の一途を辿る。独裁政権によって美しかった都市が破壊されていくなか、医師を目指す若者ハムザと出会い、恋に落ちるワアド。ハムザは仲間たちと廃墟の中に病院を設け、日々繰り返される空爆の犠牲者の治療を行っていた。だがその多くは血まみれの床の上で絶命していく。そんな非情な世界で、ふたりは夫婦となり、やがて彼らの間に新しい命が誕生する。娘の名はサマ。自由と平和への願いを込めて“空”を意味する名であった。しかし、幸せも束の間、政府側の攻撃は激しさを増し、ハムザの病院は街で最後の医療機関となってしまう。明日をも知れぬ身で母となったワアドは、娘のために、家族や愛すべき人々の生きた証を映像として残すことを心に誓う……。