2019年の国会で統計不正を質し、SNSで注目を集めた衆議院議員・小川淳也、49歳。彼が32歳だった2003年10月10日、衆議院解散の日、民主党から初出馬する小川にカメラを向けると、「国民のためという思いなら誰にも負けない自信がある」と真っすぐに語った。2005年に初当選し、2009年に政権交代を果たすと「日本の政治は変わります。自分たちが変えます」と語り、リベラル・保守双方の論客から、見どころのある若手政治家と期待されていた。しかし、いくら気高い政治思想があっても、党利党益に貢献しないと出世できず、選挙区当選でなければ発言権も弱い。小川の地元である香川1区の対抗馬は、地元有力メディアである四国新聞や西日本放送のオーナー一族で、強固な地盤を持つ自民党の平井卓也だった。そのため、惜敗しては敗者復活の比例当選を繰り返してきた小川は、権力への欲望が足りず、家族からも政治家に向いていないと思われていた。2012年からの安倍政権下では我慢を強いられ、2017年の総選挙では、希望の党への合流を決断した前原誠司の最側近として翻弄されていく。小池百合子代表への不信感から無所属での出馬を検討するが、前原や地元の盟友・玉木雄一郎への仁義というジレンマを抱え、苦悩は深まる。背水の陣の選挙戦に、小川はどう挑むのか……。