アメリカン・インディアンのロック・ギタリストにしてシンガー=ソングライターのリンク・レイによる1958年発表のインスト曲『ランブル』は、ロックの誕生に大きな影響を及ぼしたと言われている。『ランブル』はディストーション(音の歪み)とフィードバック(アンプとギターとの共鳴によって生み出されるノイズ)を初めて用いた楽曲で、暴力行為を駆り立てるのではないかと恐れたラジオ局から、放送禁止処分にされた数少ないインストゥルメンタルのシングル盤の一つでもあった。本作はこの『ランブル』のエピソードを皮切りに、インディアン文化を禁止し、検閲し、抹消しようとする試みにも関わらず、アメリカ先住民の音楽がいかにアメリカのポピュラーミュージックに不可欠なものであるかを探求していく。デルタ・ブルーズの父チャーリー・パトン、1930年代から40年代のスウィング界でナンバーワンといわれたミルドレッド・ベイリー、カナダ生まれのフォーク・シンガー、バフィ・セイント・マリー、そしてロックに革命をもたらしたギターの鬼才、ジミ・ヘンドリクスは、皆インディアンの血を引いている。しかし、そのことについて言及されることはほとんどない。そんな彼らにまつわるエピソードを、彼らをよく知るだけでなく、共に演奏したアーティストたち、バディ・ガイ、クインシー・ジョーンズ、トニー・ベネットからイギー・ポップ、スティーヴン・タイラー、スティーヴィー・ヴァン・ザントらによって語られる。さらにはボブ・ディラン、ザ・フー、自らもインディアンをルーツに持つロビー・ロバートソン擁するザ・バンドなどのライブ映像やアーカイヴ、現在も歌い継がれる先住民たちの演奏風景も交えながら、インディアンの音楽界への関わりを多角的に解明し、失われた文化の復権を高らかに謳い上げる。