血統書付きの母と、ちょっと乱暴な父との間に生まれ、後に“マロナ”と名付けられることになる雑種の小型犬は、同時に生まれた9匹の末っ子だったことから、便宜的に“ナイン”と呼ばれていた。このハート型の鼻を持つ小さな犬は、生まれてすぐ家族から離され、曲芸師のマノールの手に渡る。マノールはこの犬を“アナ”と名付け、幸せな時を過ごす。そんなある日、マノールに仕事で大きなチャンスが巡って来る。ただし、その仕事には“犬禁止”の条項が。自分が負担になると知り、マノールの下を去るアナ。寂しく通りを彷徨っていた彼女は、建設現場のゴミ箱の中から、エンジニアのイストヴァンによって発見され、“サラ”という新しい名前を授かる。建設現場で一緒に過ごすうち、サラに愛着を覚えたイストヴァンは、建物の完成後、母親の家にサラを連れて行く。だが、精神的な病を抱えていたイストヴァンの母親は、サラを傷つけてしまう。やむなくサラは、イストヴァンと彼の妻の家に引っ越すことに。ところが、イストヴァンの妻マダリナが、自分の指示に従わないサラを邪魔に扱うようになったことから、サラはそこを逃げ出す。続いて彼女が公園で出会ったのは、ソランジュという少女だった。ソランジュに新しく“マロナ”という名をもらった彼女は、持ち前の愛くるしさで、次第にソランジュの家族と絆を深めていく。そしてある日、マロナは散歩の途中、公園で倒れた祖父の命を救う。やがて成長するにつれて、徐々に犬への興味を失ったソランジュはある日、マロナを木に括り付け、デートの後で戻ると約束し、バスで街へ出かけてしまう。ソランジュの身に何かが起こると予感したマロナは、結ばれていたリードを外してソランジュを追う。そして、バスから降りたところで車に轢かれそうになっていたソランジュを見つけると、彼女の身代わりに、車の前へ飛び込むが……。