本作は、金沢21世紀美術館やルーブル美術館ランス別館などを手がけ、建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞を受賞した建築家、妹島和世が、大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎を設計していく様子を記録している。構想から完成までの3年6ヶ月という時間を追い、一人の建築家がひとつの建築に向き合う姿を鮮明に描き出していく。アートとサイエンスとテクノロジーを柔軟に連携させて、これまでになかった研究と教育を行う大阪芸術大学アートサイエンス学科。妹島は、アートサイエンスという新しいジャンルの名称が学科名として文部科学省から初めて正式に認可された、新たなクリエイターを育てる空間である新校舎の設計・建築にあたり、大切にしたことを3つ挙げている。1つは、建物が立つ丘に合わせた外観であることで、周辺の環境と美しく調和する、有機的なフォルムを導き出した。次に、建物が開かれていること、つまり、様々な方向からの出入りでき、様々な方向への視界が確保できるような、内と外との自然なつながりを実現した。そして、そこが人々の交流の場となり、誰もが立ち寄れる見晴らしのよい丘の上の“公園のような建物”となることである。大学という学生たちの未来が生まれる場所を妹島はどう作り上げていくのか、彼女の建築の魅力が浮かび上がってくる。