1993年京都に生まれた楓は、男性として生きることに違和感を持ち続けてきた。就職を目前に控え、楓はこれから始まる長い社会人生活を女性としてやっていこうと決断する。幼い頃から夢見ていた建築業界への就職も決まり、卒業までに残された数か月のモラトリアム期間。楓は女性としての実力を試そうとするかのように活動を開始する。ビューティーコンテストへの出場や講演活動などを通して、少しずつ注目を集めていく楓。メディアに対しては、自身が活躍することでセクシャルマイノリティの可能性を押し広げたいと語る楓だったが、その胸中には、父親の期待を受け止めきれなかった息子というセルフイメージが根強く残っていた。社会的な評価を手にしたい野心的なトランスジェンダー女性、そして父親との関係に自信を取り戻したいとひそかに願う息子。その間を揺れ惑う楓は、どのような未来をつくり上げていくだろうか……。