桜の蕾が膨らみ、誰もが満開の季節の訪れを感じる大阪の中心地、通称“キタ”と呼ばれる梅田北区。その一角の中崎町にある古い木造のアパートで、白骨化した老婦人の死体が発見される。警察が実況見分で周囲の捜査や関係者への事情聴取を行う中、孤独死なのか、それとも財産絡みの謀殺なのか、様々な噂が飛び交っていた。同じ頃、中国、台湾、韓国からの観光客やマレーシアのビジネスマン、ネパール難民、ミャンマー人留学生、ベトナム人技能実修生など様々な外国人たちが訪れるこの地区では、彼らと日常を共有する日本人たちとの間で、人知れず三日間の小さな出来事が起きていた。時に滑稽で、時にもの悲しく、時に倒錯的に……。事件の捜査が終わりを告げるとき、この間、彼らに訪れた様々な人生の岐路も、新たな展開を迎えようとしていた。