前作「なぜ君は総理大臣になれないのか」公開後、主役の小川淳也議員に対して、その純粋さ、清貧さ、生真面目さを知った観客から“こんな政治家がいたのか?”との声が上がり、注目度は一気に高まった。しかし、小川は選挙に弱い。2003年の初出馬から1勝5敗と劣勢が続き、比例復活当選を繰り返してきた。その選挙区“香川1区”で、小川の前に立ちはだかってきたのが、自民党の平井卓也議員(63歳・当選7期)だ。平井氏は3世議員で、地元でシェア6割を誇る四国新聞と日本テレビ系の西日本放送のオーナー一族。現在も平井氏の弟が四国新聞社の社長を務め、母親が社主という地元では誰もが知る“香川のメディア王”だ。対する小川は、“地盤・看板・カバンなし”の“パーマ屋(美容室)のせがれ”。対照的な2人の候補者が並び立つ香川1区だが、前回2017年の総選挙では“希望の党騒動”が勃発しながらも、両者の票差は二千票にまで縮まり(当確ラインは約8万票)、平井氏が辛勝。その後、小川は統計不正についての国会質疑で注目を集め、映画の話題性もあり、知名度は全国区に広がりつつあった。一方、平井氏は2020年9月に菅義偉政権で “デジタル改革担当大臣”に就任。保守地盤である香川の有権者にとって、“大臣”の名は絶大だ。もはや平井氏の地位は盤石、小川の苦戦は免れない……と思いきや、平井氏はオリパラアプリに関する不適切発言などで新聞や週刊誌の標的となっていく。そんな中、平井氏が意外にも本作の取材に応じた。「なぜ君」は観ていないが、タイトルがキャッチーでいいと褒め、悠然と自らの政治観を語る平井氏に、大島新監督はどう斬り込んだのか。さらに公示直前、激戦の香川1区に日本維新の会から町川順子氏が名乗りを上げた。本作は、次期総選挙に的を絞り、与野党各陣営にカメラを向ける。有権者が政治に求めるものは何か。“香川1区”の選挙結果は何を物語るのか……。