2017年、レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の傑作とされる『サルバトール・ムンディ』、通称“男性版モナ・リザ”が、オークションで史上最高額となる510億円で落札された……。すべてはニューヨークの美術商の“第六感”から始まった。ダ・ヴィンチには“消えた絵”があり、それには救世主が描かれているという説がある。名も無き競売会社のカタログに掲載された絵を見て、もしかしたらと閃いた美術商が13万円で落札したのだ。その後、彼らはロンドンのナショナル・ギャラリーに接触、専門家の鑑定を得たギャラリーは、ダ・ヴィンチの作品として展示する。そんななか、お墨付きをもらったこの絵にあらゆる魑魅魍魎が群がり始める。その意外な身元を明かすコレクター、手数料を騙し取る仲介者、利用されたハリウッドスター、巧妙なプレゼンでオークションを操作するマーケティングマン、国際政治での暗躍が噂されるある国の王子……。一方で、「ダ・ヴィンチの弟子による作品だ」と断言する権威も現れ、そして遂に510億円の出所が明かされる。だが、それはルーブル美術館を巻き込んだ、新たな謎の始まりであった……。