2018年、京都の西陣にある映画監督・原將人の自宅が全焼した。家族5人は幸い無事だったものの、すべての家財道具と50年の映画人生をかけた全作品のオリジナルフィルムや脚本、機材が焼失してしまう。原將人は新作のデータを救うため火の中へ戻り、やけどを負って入院。夫を安心させようと、妻のまおりは、とっさに家族の様子をスマートフォンで撮影する。慌てて買った炊飯器で作ったほかほかのおにぎり。家族揃ってのラジオ体操。双子の妹をあやす兄。そこにあるはずのものが無い悲しみ。他人の優しさ。カメラ=母の眼差しは、非日常のなかの家族の風景をつぶさに捉えていく。屈託のない笑顔を見せる子どもたちにつられ、大人たちが前を向き始めた頃、家の焼け跡から奇跡的に生き残った「あるもの」が見つかった。