タイ北部やラオス西部のゾミア(山岳地帯)で暮らすムラブリ族は、400人程度しかいない少数民族。タイ北部ナーン県にあるフワイヤク村は、300人のムラブリ族が暮らす最大のコミュニティである。今では男たちはモン族の畑に日雇い労働に出て、女たちは子育てや編み細工の内職をしている。ムラブリ族の間では、森の中で出くわす妖怪や幽霊などのフォークロアも豊富に伝えられてきた。文字のないムラブリ語の語彙を収集する言語学者・伊藤雄馬が話を聞いて歩くと、ムラブリ族はラオスに住む別のグループのことを人食いと怖れている様子。国境を超えてラオスの密林で昔ながらに狩猟採集をしてノマド生活を送るムラブリを探すことにした伊藤とカメラは、ある村で、山奥の野営地から下りてきたムラブリ族が村人と物々交換している現場に出くわす。それは少女ナンノイと少年ルンだった。地元民の助けを得て、伊藤とカメラは密林の奥へとわけ入っていく。