世界でもっとも有名な存命するアーティストのひとりで、パリ、ピエトラサンタ、NYを拠点に精力的な活動を続けているフェルナンド・ボテロ。彼はどのようにして「マエストロ」になったのかは、あまり知られていない。ボテロは1932年4月19日、コロンビアのメデジンで商人の父とお針子の母の元に生まれた。幼い頃に父を亡くし貧しい生活を送っていたが、新聞のイラストレーターとして働き始め、修行のためヨーロッパ、メキシコ、NYへと移る。人間や動物をふくよかな体型で表現したユーモアあふれる独特の作風は、厳しい評価を受ける一方で、1950年代後半からヨーロッパで次第に注目を集めるようになる。そして1963年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のエントランス・ホールにボテロの《12歳のモナ・リザ》が展示されたことで、その名が一気に広まる。貧困、長年の厳しい批判、4 歳の息子の悲劇的な死、これらを乗り越えた彼の静かな決意と強さ、絶え間ない構想、揺るぎない信念。自らの作品をすべて寄付して作られたボテロ美術館の内部や、カリフォルニア大学バークレー校に寄贈されたアブグレイブ刑務所を描いた絵画など、さまざまな作品が登場し、彼の芸術の真相を見せてくれる。