世界有数の水産大国であるタイには、人身売買業者に騙されるなどして漁船で働かされている奴隷労働者が数万人存在すると言われている。タイの水産物輸入で世界第二位の日本は、ツナ缶、エビ、そして養殖用の魚粉などをタイから輸入しており、キャットフードに至っては約半分がタイ産である。安価な水産物の裏で犠牲になっているのは、タダ同然または無給で働かされている海の奴隷たちだ。何千キロにも及ぶ遠洋漁業に乗船させる船員として、人身売買業者はタイやミャンマー、ラオス、カンボジアなど貧困国から集めた男性たちを、数百ドルでタイの漁業会社に売り飛ばす。漁業以外の仕事で誘惑され、拉致された人々は、数ヶ月やひどいと何年も下船することなく、奴隷として船上で働かされる。2017年ノーベル平和賞にノミネートされたパティマ・タンプチャヤクルや、自身も11年間奴隷労働した経験のあるトゥン・リンたちは脅迫など数々の困難に立ち向かいながら、漁船からインドネシアの離島に逃げた男性たちを救出するため、命がけの航海へと漕ぎ出す。