昭和になってすぐのこと、萩原朔太郎(吹越満)を師と仰ぐ三好達治(東出昌大)は、朔太郎家に同居する美貌の末妹・慶子(入山法子)と出会い、たちまち恋に落ちる。彼女との結婚を認めてもらうため、北原白秋の弟(萩原朔美)が経営する出版社に就職する達治だったが、僅か2ヶ月で倒産。再び寄る辺なき身となった達治は、慶子の母に貧乏書生と侮られるのであった。失意の達治は、佐藤春夫(浦沢直樹)の姪と見合い結婚をする……。時は過ぎ、日本が戦争へとひた走る頃、達治の戦争を賛美する詩は多くの反響を呼び、時代は彼を国民的詩人へと押し上げてゆく。だが朔太郎とはその戦争詩をめぐって関係が悪化、そして昭和17年、朔太郎は病死する。その4日後には慶子の夫・佐藤惣之助が亡くなった……。昭和19年。朔太郎三回忌で慶子と再会した達治は16年4ヶ月の思いを伝え、妻子と離縁し、慶子を家に迎える。東京に空襲が迫りくるなか、身を隠すように越前三国に新居を構えた達治と慶子であったが、そこには雪深い冬の過酷な生活が待ち受けていた。純粋な文学的志向と潔癖な人生観の持ち主である達治は、奔放な慶子に対する一途な愛とその裏返しの憎しみが次第に心を蝕んでゆく。やがて、ふたりの愛憎劇は思いもよらぬ結末を迎える……。