ベナン出身のトリ(パブロ・シルズ)とカメルーン出身のロキタ(ジョエリー・ムブンドゥ)は、アフリカからベルギーへ辿り着く途中で出会い、本当の姉弟のような絆で結ばれた。すでにビザが発行されているトリの姉と偽り、ロキタはビザを取得しようとしたが、ビザ取得のための面接でロキタは質問に答えられず、パニック発作を起こしてしまう。トリとロキタは、イタリア料理店の客に向け、カラオケを歌って小銭を稼いでいた。ところがそれは表向きで、実はシェフのベティム(アウバン・ウカイ)が仕切るドラッグの運び屋だった。今日もベティムに指示され、ドラッグを客の元へ運ぶ。警察に目をつけられるなど、常に危険と隣り合わせで、時には理不尽な要求もされる。だが、それでも受け入れるしかない。人としての尊厳を踏みにじられる日々を、トリとロキタは支え合いながら生活していた。そんなある日、ベルギーへの密航を斡旋した仲介業者によって、祖国の母に送金予定だった金を奪われ、落胆するロキタ。2人の夢は、誰にも邪魔されずに祖国に仕送りをして、アパートを借りて一緒に暮らすこと。一刻も早く、ビザを手に入れて家政婦として働こうと、偽造ビザと引き換えに、ロキタはベティムが提案する孤独で危険な仕事を引き受ける。目隠しをして連れてこられたのは、外界からの情報を一切遮断された倉庫のような場所。劣悪な環境の上、外部の者に場所を特定されないように、携帯電話のSIMも没収される。どんな時も一緒だったトリとロキタは、こうして離ればなれに。支え合って生きる2人の絆を断ち切ろうとする世界。2人が生き抜く道はあるのだろうか……。