長男の神尾光(嶺豪一)には、“喜び”がない。新作映画のシナリオを執筆中の彼は、監督からラストシーンの“再会の喜び”を表すセリフがしっくりこないと、リライトを求められる。困った光は、主演俳優で友人の時男(宇野祥平)と共に、言葉を探そうと街に出る。人々が交わす様々な言葉の中から、喜びの感情を捕まえようともがく光。彼らは“喜びの言葉”を見つけられるのだろうか。長女の神尾火水子(柳英里紗)は、“怒り”がないことに葛藤し、自ら“怒り”を抱けそうな場所を探していた。社会革命を目指す二人の青年、星(諫早幸作)と量(木村文哉)が率いる“レボル”の下で革命の象徴となり、虹(塩塚モエカ)と華(伊澤彩織)の下で多様性の討論会に参加する。しかし、その活動が過激化していく中、やはり 火水子は彼らと同じ“怒り”を共有することができない。渦巻く怒りの中心で戸惑い続ける火水子はじっと世界を見つめている。“楽しさ”がわからない次男の神尾太陽(井之脇海)は、恋人のエミ(木竜麻生)と同棲している。メリーゴーランドに乗っても、記念写真を撮っても、無表情の太陽に釈然としない思いを抱えるエミは、太陽からプロポーズされた際、“私といて本当に楽しい?”と聞いてしまう。動揺した太陽は、埋められない溝をどうにか埋めようともがく。些細なすれ違いを重ねながらも、二人の日常は続いていく。“寂しさ”という感情がない次女の神尾花子(白田迪巴耶)は突然、高校を中退し、小さな漁港の旅館で働き始める。その旅館には、不思議と似た空気を纏った人が集まってくる。退学手続きのため、花子を訪ねた担任教師の藤巻(岩谷健司)もその一人だ。そこに現れた父(邦城龍明)は、“寂しい思いをさせてごめんな”と何度も謝ってくる。自分の感情を理解していない父親に苛立つ花子と、花子に共感する藤巻。そんな藤巻に、花子はある提案を持ちかける。