石川県金沢市の生まれ。高校生の時に見た杉村春子主演の舞台『欲望という名の電車』に深い感銘を受け、密かに“女優”になることを目指す。1980年に日本大学芸術学部演劇学科を卒業後、西村晃の付き人をつとめながら、舞台を中心に活動。84年の『敷布を捲くって虹色世界』より“加納幸和事務所”に参加し、87年には加納らと“花組芝居”を結成する。旗揚げ公演の『ザ・隅田川』87以降、歌舞伎を題材にした演目を上演する男優だけの“ネオ・カブキ”劇団として注目を集め、篠井は女形のトップスターとして活躍。『新雪之丞変化』88、『イッヒ・ビン・ヴァイル』89、『花組沙翁ロミオ&ジュリエット』90などを経て、90年に退団する。その後は“水戸芸術館ACM劇場”に3年間在籍して、『サド侯爵婦人』『ディオニュソス』90、『マクベス』91など鈴木忠志演出の作品に連続出演。現代劇の女形として確固たる地位を築き、小劇場から商業演劇まで和洋問わず多数の舞台を踏んで、92年にはゴールデンアロー賞の演劇部門新人賞を受賞している。映画は、カルト人気を博した深夜ドラマの劇場版である飯田譲治監督「NIGHT HEAD」94で初出演。超能力を持つ主人公の兄弟と敵対する異能力者・三雲玄吾を妖しく演じた。以降も篠田正浩監督「写楽」95などに出演するが、非凡なバイプレイヤーとして一層注目を浴びたのはテレビドラマで、TBS『リスキーゲーム』96、フジテレビ『総理と呼ばないで』97、日本テレビ『FIVE』97、『君といた未来のために』99、テレビ朝日『研修医なな子』97、『アナザヘヴン eclipse』00などで、主に中性的な人物や個性的な悪役を演じ、存在をアピールした。舞台でも強烈な個性を発揮する一方、庵野秀明監督「キューティーハニー」04、鈴木清順監督「オペレッタ狸御殿」05、行定勲監督「クローズド・ノート」07などの映画に助演。テレビドラマはほかに、NHK『元禄繚乱』99、『功名が辻』06、『瞳』08、日本テレビ『女王の教室』05、『ホカベン』08、『ザ・クイズショウ』09、フジテレビ『鹿男あをによし』08などがある。日本舞踊・宗家藤間流の名取でもある。