福岡県久留米市の生まれ。5歳で女優を志し、小学6年生からオーディションを受け始める。中学2年生の時に、福岡のモデル事務所に所属。数々の九州ローカルCMに出演したが、本人はあくまで女優志望だったためにモデルの仕事はあまり肌に合わなかったようだ。ただ、このローカルCMに出演しているところを見出され、西日本短期大学付属高校2年生だった1997年に、映画「がんばっていきまっしょい」98の東京オーディションに参加するチャンスを掴む。ここで合格した彼女は、主人公・篠原悦子役に抜擢。敷村良子による第4回坊ちゃん文学賞大賞受賞作を磯村一路監督が映画化した本作は、70年代の四国・松山を舞台に、高校で女子ボート部を設立した悦子と仲間たちが、ひたむきにレースに打ち込んでいく姿を描いている。自分の思いのまま何にでも一途に突き進む悦子に扮した彼女は、その瑞々しい魅力で注目を浴び、夢だった女優としての道を歩み始める。この1作でキネマ旬報賞新人女優賞を始め、日本アカデミー賞、ゴールデンアロー賞、毎日映画コンクール、山路ふみ子映画賞、報知映画賞、ヨコハマ映画祭、おおさか映画祭、ブルーリボン賞、日本映画批評家大賞と、この年の新人賞を総なめにした。またクランクアップ後の98年には、サントリーのジュース『なっちゃん』のCMに初代キャラクターとして起用されて知名度は全国的になり、彼女はこのCMに2001年まで出演し続けた(05年に同じキャラクターで復活)。同年には樹木希林と親子の設定で競演した味の素『ほんだし』のCMも始まり、彼女の成長に合わせて連続したストーリー仕立てで描かれたこのシリーズは、市川準監督の演出によって05年まで続く。ほかにも多くのCMに起用された彼女は、一時期“CMの女王”とも呼ばれたが、テレビドラマにはフジテレビ『オーバータイム』99にゲスト出演した程度で、女優としての主となる活躍の場は、やはり映画であった。00年の篠原哲雄監督「はつ恋」では、母親の古いラブレターを手がかりに、母の初恋の思い出をたどっていく17歳の少女を自然に演じて、日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。21歳の女性に扮した初めての恋愛映画「東京マリーゴールド」01では、市川準監督、共演が樹木希林と『ほんだし』のトリオが集結。ここでは外国に恋人がいる男性と期間限定の成就できない恋をするヒロインの、生々しい生理と心の成長を見事に表現した。この演技で高崎映画祭最優秀主演女優賞に輝いている。宮藤官九郎の脚本によるコメディ「ドラッグストア・ガール」、行定勲監督が大学生仲間の一夜のエピソードを描いた「きょうのできごと/a day on the planet」に出演した04年辺りまでは、彼女が演じる役柄は年齢的にも精神的にも等身大に近いものが多かった。そういう意味では、無理をせずにゆっくりと映画女優としてのキャリアを積み重ねていったと言える。その後は、京極夏彦の同名小説を映画化した実相寺昭雄監督「姑獲鳥の夏」05と、その続編の原田眞人監督「魍魎の匣」07での行動的な女性記者、君塚良一監督「容疑者・室井慎次」05での経験不足で頼りない弁護士、あるいは本木克英監督「ゲゲゲの鬼太郎」07・08での半妖怪・猫娘など、キャラクター性の強い役にも意欲的に取り組んで、演技の幅を広げていった。その一方、05年に中国製作のテレビドラマ『美顔』に出演したことをきっかけに中国語圏にも進出し、06年にはチェン・ボーリンと台湾映画「幻遊伝」で共演。そのすぐ後にも、天願大介監督「暗いところで待ち合わせ」06で再びチェンと顔を合わせる。翌07年、こうの史代の漫画を映画化した「夕凪の街・桜の国」に主演。これは広島の被爆者とその末裔たちに影を落とす戦争の傷跡を、三代にわたる女性映画として佐々部清監督が描いたもので、自ら出演を希望して実現した作品だった。篠原哲雄監督と再び組んだ藤沢周平原作の「山桜」08では初めて時代劇にも挑み、恋心を内に秘めた武家の女性を演じきった。同年代の女優と比べ、まったくと言ってもいいほど出ていなかったテレビドラマにも、08年のTBS『猟奇的な彼女』で草彅剛とともに初の連ドラ主演を果たして以降は、NHK『派遣のオスカル・「少女漫画」に愛をこめて』09に主演したほか、日本テレビ『にぃにのことを忘れないで』09、フジテレビ『世にも奇妙な物語20周年スペシャル・秋/はじめの一歩』10、TBS『赤い指』11などのスペシャルドラマに続けて出演している。舞台も『思い出トランプ』08、『おくりびと』10などに出演し、最近では活動のフィールドが広がってきたが、やはり田中麗奈の本道は映画にある。11年末公開予定の鶴橋康夫監督「源氏物語・千年の謎」では生霊となった六条御息所を演じ、12年初頭公開予定の「麒麟の翼/劇場版・新参者(仮)」にも『赤い指』に引き続き出演するなど、今後も映画出演は相次ぐ。30代を迎えた彼女はこれまでの経験を活かし、女優として、大人の女性としてさらに花開くであろう。