東京都の生まれ。本名・堀越孝俊。歌舞伎役者の十二代目市川團十郎の長男で、母は着物プロデューサーでもある堀越希実子、妹は舞踊家の三代目市川ぼたん。1983年5月、歌舞伎座『源氏物語』の春宮で初御目見得ののち、85年5月に七代目市川新之助を名乗って、歌舞伎座『外郎売』の貴甘坊で初舞台を踏む。幼少時から続く厳しい稽古と家柄、伝統の重責に耐えかね反発もしたが、17歳の時に偶然目にしたフィルムで、祖父である十一代目市川團十郎の芸と姿の美しさに感動し、歌舞伎役者として生きていく決意を固める。以降、歌舞伎座『鏡獅子』95、浅草公会堂『勧進帳』99の弁慶、新橋演舞場『助六由縁江戸桜』00の花戸川助六など古典の大役に次々と挑み、初役づくしの中でいずれも周囲の期待を上回る出来栄えを見せた。一声、二顔、三姿という祖父譲りの資質を揃えた役者と評され、歌舞伎界の未来を担うプリンスとして大きな期待を一身に背負う。2000年、歌舞伎座『源氏物語』で光君をつとめ、発売初日にチケットが完売するほどの人気を獲得。この時期、五代目尾上菊之助、二代目尾上辰之助(現・四代目尾上松緑)とともに“平成の三之助”と呼ばれ、新たな歌舞伎ブームを巻き起こした。歌舞伎以外では、青山劇場『ライル』90、日生劇場『スタンド・バイ・ミー』91、『海神別荘』00などの舞台に出演するほか、NHK大河ドラマ『花の乱』94、テレビ東京『豊臣秀吉・天下を獲る!』95などのテレビドラマにも進出。03年のNHK大河ドラマ『武蔵/MUSASHI』では堂々主役を張り、器の大きさを見せつけた。04年5月、歌舞伎座『暫』の鎌倉権五郎ほかで十一代目市川海老蔵を襲名。06年には佐々部清監督「出口のない海」で映画初主演も飾り、太平洋戦争末期、脱出装置のない定員1名の人間魚雷“回天”に乗って敵艦に激突するという究極の任務についた若者・並木浩二役を、抑えの利いた演技で丁寧に造形した。07年、パリ・オペラ座で初の歌舞伎公演を父・團十郎とともに実現し絶賛を浴びる。テレビドラマはほかに、TBS『MR.BRAIN』09、日本テレビ『霧の旗』10など。10年3月、フリーキャスターの小林麻央と結婚。成田屋・市川宗家の御曹司として目覚しい活躍を見せる一方、同年11月に酒に酔った末のトラブルで重症を負い、当面の公演中止と無期限謹慎を発表する。翌11年7月に新橋演舞場『七月大歌舞伎』で舞台復帰。傷害事件以前にすでに完成していた主演時代劇の三池崇史監督「一命」も、同年10月にようやく公開の運びとなった。