【歴史的なミュージカルを発表した名匠】アメリカのインディアナ州ウィンチェスターの生まれ。フランクリン・カレッジを中退、1933年、RKOの編集部に入る。音響編集、編集助手、39年にはチーフ編集者となり、「カッスル夫妻」、「市民ケーン」、「偉大なるアンバーソン家の人々」などを担当する。44年「キャット・ピープルの呪い」で監督デビュー。49年、ボクシングの八百長試合をセミ・ドキュメンタリースタイルで描いた「罠」が評判となり、今ではSF映画の古典となって2008年にはリメイクもされた「地球の静止する日」(51)、トロイ戦争の一部始終を大スペクタクルで描いた「トロイのヘレン」(55)を撮り、ボクシングのミドル級チャンピオン、ロッキー・グラジアーノの伝記「傷だらけの栄光」(56)で、主演のポール・ニューマンをスターにすると同時に自らも売れっ子監督に名乗り出た。次いで実在の女死刑囚を主人公にした社会派ドラマ「私は死にたくない」(58) を撮る。【ミステリー、SF の世界でも活躍】61年にはミュージカル映画として画期的な成功を収めた「ウエスト・サイド物語」を発表。舞台を演出したジェローム・ロビンスと共同監督だったが、大掛かりなニューヨーク・ロケから始まって、ドラマの厚味とともに劇的効果を生みだした。アカデミー賞では作品・監督など10部門で大量受賞している。ホラー作品「たたり」(63)を撮った後、65年には「サウンド・オブ・ミュージック」を発表。トラップ一家をめぐる心温まるミュージカルの傑作で、この作品でもアカデミー賞の作品・監督賞など5部門で受賞。「ウエスト・サイド物語」に次いで歴史的なミュージカル2本を撮ったことになり、巨匠の地位を万全なものとした。「砲艦サンパブロ」(66)は、1926年の中国を舞台に、揚子江に出動したアメリカのオンボロ軍艦サンパブロ号の乗組員のドラマで、ワイズには珍しく敢えてヴェトナム戦争批判を行っている。「スター!」(68)はジュリー・アンドリュース主演のミュージカル大作。そして「アンドロメダ…」(71) ではミステリーの分野でもワイズは異能ぶりを発揮する。アル中と赤ん坊だけが生き残った村を舞台にした医学ミステリーの傑作で、宇宙からやってきたウイルスと科学者たちとのミクロの戦いを描いたもの。以降も「ふたり」(73)、「オードリー・ローズ」(77)、SF大作「スター・トレック」(79)など高水準の作品を発表した。