【男対男を描き続けたアクション映画の巨匠】アメリカ、ロードアイランド州クランストンの生まれ。政財界に名士を出した名門の出である。ヴァージニア大学を経て、1941年、RKO撮影所に助手として入った。戦争で人手不足となり第一助監督となり、ジャン・ルノワール、ジョセフ・ロージー、チャールズ・チャップリンなど、そうそうたる監督につく。野球映画“Big Leaguer”(53)で監督デビュー。54年の「ヴェラクルス」は南北戦争末期のメキシコを舞台に2人の男の火花を散らす闘いを描いたアクション映画、55年には“マイク・ハマー”シリーズ「キッスで殺せ」を冷徹なハードボイルドで撮り、この2作で一躍注目を浴びるようになった。続く「攻撃」(56)は痛烈な軍隊批判映画だった。50年代末から60年代初頭にかけて、ヨーロッパで活動。62年にはベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの共演によるホラーの傑作「何がジェーンに起ったか?」で観客をふるえ上がらせ、デイヴィス主演では64年にも「ふるえて眠れ」を撮っている。「飛べ!フェニックス」(66) はサハラ砂漠に不時着したオンボロ輸送機の奇想天外な脱出劇を描いたもので、個性豊かな乗組員たちがエネルギッシュに活躍する。「特攻大作戦」(67)は、ノルマンディー上陸作戦の最前線、死刑囚ばかりを集めた部隊が敵軍の砦を攻撃する一大アクション。群像劇に手馴れた腕を振るうアルドリッチの面目躍如である。男同士の極限にいたるまでの闘い。【男同士の極限に至いたるまでの闘い】「女の香り」(68)はハリウッド女優の生涯、「甘い抱擁」(68)は華やかなテレビ界の裏側をを、J・H・チョイス原作の「傷だらけの挽歌」(71)は100万ドルの身代金をめぐるギャング団と娘との醜い人間的葛藤をハードボイルド・タッチで描く。73年、30年代不況期のアメリカの浮浪者=ホーボーたちの中で“帝王”と呼ばれた男と、彼らの列車へのタダ乗りを阻止しようとする車掌との闘いを描く「北国の帝王」でアルドリッチの本領を発揮し、続いて74年には、囚人対看守チームのフットボールの試合を描いた硬派映画の傑作「ロンゲスト・ヤード」でファンを唸らせた。「ハッスル」(75)は、コールガールと付き合うロス市警の刑事が、彼女の父親が起こした殺人事件に巻き込まれる。ミサイル基地に潜入した4人の脱獄者がアメリカ国家を脅迫するポリティカル・アクションのオールスター映画の秀作「合衆国最後の日」(77)。男同士の極限にいたるまでの戦いを描いてきたアルドリッチだが、最後の作品では女性を描いた。といっても女子プロレスが舞台で、全国を転戦する二人の美女とマネージャーを描いた「カリフォルニア・ドールス」(81)。プロレス試合の迫力、またロードムービーとしても出色の作品である。