【フィンランドが生んだオフビートな奇才】フィンランドのオリマティラ出身。兄はやはり映画監督のミカ・カウリスマキ(代表作「GO!GO!L.A.」)。ブルースとR&B、バイクに夢中の少年時代を送り、19歳で兵役を終えると、首都ヘルシンキで郵便配達をはじめ様々な職に就きながら、シネマテークへ通いつめて映画を観る。大学で社会学を学ぶかたわら映画評論家・雑誌編集者として活動するも、3年目に中退。1981年、兄ミカの監督処女作「嘘つき」の脚本と主役を担当し、同年、フィンランドのロック・バンドのツアーを撮影した長編ドキュメンタリー映画「サイマー現象」を兄弟で共同監督する。初の劇映画作品は、ドストエフスキーの古典を映画化した「罪と罰」(83)。続くコメディ「カラマリ・ユニオン」(85)も好評を得て、3作目の「パラダイスの夕暮れ」(86)がカンヌ国際映画祭の監督週間に出品され、国際的な注目を浴びた。ロックバンド、レニングラード・カウボーイズの活躍を描いた2作品「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(89)、「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う」(94) が世界中で大ヒットして、ファン層を一気に拡大。92年の「ラヴィ・ド・ボエーム」がベルリン国際映画祭で国際評論家連盟賞を、2002年の「過去のない男」がカンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、フィンランド映画界では稀少な世界的な人気監督となる。【労働者・敗者三部作でスタイル確立】オフビートなテンポとシニカルなユーモア、極端に少ない台詞などで独特の雰囲気を生み出し、社会の底辺やさえない日常を生きる人びとに目を向けた作品が多い。代表は、ゴミ収集人、失業者、女工を主人公にした労働者三部作(「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」)と、失業夫婦、ホームレス、孤独な男を描いた敗者三部作(「浮き雲」「過去のない男」「街のあかり」)。自作すべての脚本を手がけており、劇中に犬をよく登場させるのも特徴。アメリカでロケをした「レニングラード・カウボーイズ」や憧れの俳優ジャン=ピエール・レオを主役に招きイギリスで撮った「コントラクト・キラー」(90)、フランスで製作した「ラヴィ・ド・ボエーム」など海外を舞台にした作品も幾つかあるが、基本的には母国フィンランドで映画づくりを続けている。