東京都千代田区神田の生まれ。本名・太田雅子。神田で老舗の寿司屋を経営する父・政平と母・あい子の一男二女の長女。荏原第六中学校を経て、1962年に八雲学園高校に進む。高校在学中はバスケットの選手として活躍する一方で、元NHKアナウンサー・高橋圭三のプロダクションに所属していた。65年、日本テレビ『おのろけ夫婦合戦』で高橋のアシスタントをしているところをスカウトされ、卒業と同時に日活に入社。本名を芸名にして、同年の西河克己監督「悲しき別れの歌」の脇役で女優デビューする。続く「さすらいは俺の運命」にも脇役で出演したのち、「青春前期・青い果実」「あいつとの冒険」で太田博之、「太陽が大好き」で浜田光夫を相手に主演という幸運なスタートを切った。だが、強い意志を感じさせる個性のために、その後の３年間は役に恵まれず脇役出演が続く。69年、日活オールスターの任俠もの「日本残俠伝」出演を機に、マキノ雅弘監督の命名で芸名を“梶芽衣子”に改める。以降、長谷部安春監督「盛り場仁義」69、石井輝男監督「怪談昇り竜」70に女俠客役で主演。次いで、イメージチェンジを図った現代劇「女番長（スケバン）・野良猫ロック」に始まる、「ワイルド・ジャンボ」「セックス・ハンター」「マシンアニマル」70、「暴走集団'71」71の「野良猫ロック」シリーズ５作に、不良少女たちのリーダーとして主演し、また澤田幸弘監督「反逆のメロディー」70や藤田敏八監督「新宿アウトロー・ぶっ飛ばせ」70では渡哲也、原田芳雄などの無頼の男たちと互角に渡り合う女性アウトローに扮して女優としての可能性を示した。だが後年“日活ニュー・アクション”と呼ばれるそれらの作品群を生み出した時代は短命で、71年からのロマンポルノ路線変更を機に、７年間で約60本に出演した日活を退社、フリーとなる。72年、藤純子（現・富司純子）の抜けた穴を埋めるべく女優を探していた東映から、“ポスト藤”として白羽の矢を立てられ、東映に入社。その第１作「銀蝶渡り鳥」72、第２作「銀蝶流れ者・牝猫博奕」72では報復に燃える女賭博師・樋口ナミを演じる。続いて主演した篠原とおる原作、伊藤俊也監督の「女囚701号・さそり」72では、裏切った男への復讐心のみで生きる執念の女・松島ナミに扮して快心の演技を披露し、当たり役とする。伊藤監督のシャープな演出と、大きな瞳から発する鋭い眼差しを特徴とする梶の演技が見事に合体して、映画は大ヒット。同じ伊藤監督により「女囚さそり・第41雑居房」72、「けもの部屋」73、長谷部監督により「701号怨み節」74が作られた。また72年には主題歌『怨み節』を歌い、120万枚のセールスを記録。75年の有線大賞を受賞した。73年に東映を退社。再びフリーとなり、東映以外の映画にも出演するようになる。深作欣二監督の東映「仁義なき戦い・広島死闘篇」73で男たちに運命を翻弄される女、藤田監督の東宝「修羅雪姫」73、「修羅雪姫・怨み恋歌」74の美しい復讐鬼、斎藤耕一監督の東宝「無宿（やどなし）」74の漂泊する元娼婦、深作監督の東映「やくざの墓場・くちなしの花」76の日本と朝鮮の混血女性など、情念と怨嗟を綯わせた梶ならではの独特の演技を披露する。この頃から衰退著しい映画からテレビに移行し始めるが、久々の映画出演となった増村保造監督によるATG「曽根崎心中」78では、男への愛を貫き心中を美学として捉える娼婦・お初を鮮烈に演じ、キネマ旬報賞、毎日映画コンクール、報知映画賞、ブルーリボン賞などで主演女優賞を獲得する。そのほか、深作監督「新仁義なき戦い・組長の首」75、増村監督「動脈列島」75、「大地の子守歌」76、野村芳太郎監督「わるいやつら」80、新藤兼人監督「落葉樹」86などに助演している。テレビドラマは、66年の日本テレビ『地方記者』で初出演。『ある日わたしは』67～68で初のレギュラー以降、フジテレビ『どくとる親子奮闘記』71、『時よ炎のごとく』80、『スタア誕生』85、『鬼平犯科帳』89～10、『剣客商売』98～10、『あなたの隣に誰かいる』03、『大奥・第一章』04、テレビ朝日『荒野の素浪人』72、『幻のささやき』76、『花嫁は16才！』95、『八州廻り桑山十兵衛・捕物控ぶらり旅』07、『忠臣蔵・その男、大石内蔵助』10、TBS『同棲時代』73、『寺内貫太郎一家』『腐食の構造』77、『はらぺこ同志』82、NHK『妻たちの二・二六事件』76、日本テレビ『夏の影』75、テレビ東京『逃亡者（のがれもの）おりん』06～07などがある。