東京都世田谷区の生まれ。本名・金沢英子。高校卒業後、タクシー会社のOL、喫茶店のアルバイトなどを経て、1971年7月、スカウトされて小林悟監督のピンク映画「私はこうして失った」に出演する。以後、「女紋交悦」71、「寝室日記」「性と愛の条件」「現代日本暴行暗黒史」72など30本以上の成人映画に出演し、白川和子が日活に去ったあとスター不在となったピンク映画界のニューヒロインとなる。72年、日活に引き抜かれて、遠藤三郎監督「団地妻・忘れ得ぬ夜」でロマンポルノに初主演。続いて、同じく遠藤監督の「情婦」72で泥沼のような生活から這い上がろうとするキャバレーのホステスを、曽根中生監督「熟れすぎた乳房・人妻」72では倦怠感に陥った人妻を好演して、ロマンポルノを引退した白川和子の穴を埋めるべく、白川の当たり役だった「団地妻」シリーズを受け継ぐ。同シリーズは「団地妻・雨やどりの情事」77までの5年間で断続的に9本作られ、日活ロマンポルノの代表作になった。この間、73年には永井荷風原作、神代辰巳監督の「四畳半襖の裏張り」に芸者・袖子役で出演。精緻を極めた神代演出に応えて、技巧の限りを尽くした性愛シーンを情感豊かに演じ、彼女とロマンポルノの世評を高めた。神代作品への参加はこれ以降、「四畳半襖の裏張り・しのび肌」「赤線玉の井・抜けられます」74、「壇の浦夜枕合戦記」77があり、ロマンポルノ路線の成熟に寄与する。75年、昭和の猟奇事件として知られる“阿部定事件”を田中登監督が映画化した「実録阿部定」では、実在の阿部定を哀切かつしなやかに演じて代表作の1本にする。田中作品では「江戸川乱歩猟奇館・屋根裏の散歩者」76、「発禁本『美人乱舞』より・責める!」77にも出演し、神代、田中両監督作品で女優としての演技力に研きをかけていった。その演技力と存在感は、中上健次原作、神代辰巳監督の「赫い髪の女」79で頂点に達する。男と体を合わせることでしか生を実感できない、不安を消せない女を自然体で演じて高い評価を得て、報知映画賞の主演女優賞を受賞。この前年の78年より一般映画への出演要請が相次ぎ、岡本喜八監督「ダイナマイトどんどん」78と五社英雄監督「雲霧仁左衛門」78では、ブルーリボン賞助演女優賞を受賞している。30歳を迎えようとしていた79年にフリーとなり、大映製作、松竹配給の山根成之監督「黄金の犬」、野村芳太郎監督「わるいやつら」に出演。大作に相応しい存在感を示す。以降、「真夜中の招待状」「悪霊島」「とりたての輝き」81、「飛鳥へそしてまだ見ぬ子へ」「えきすとら」82と続く。この頃の注目作は、中川信夫監督の遺作となった「怪異談・生きてゐる小平次」82で、ふたりの男に愛される女・おちかを艶めかしく演じた。崔洋一監督「十階のモスキート」83、降旗康男監督「魔の刻」85、柳町光男監督「火まつり」85、澤井信一郎監督「早春物語」85、「恋人たちの時刻(とき)」87、小川紳介監督「1000年刻みの日時計・牧野村物語」87、三國連太郎監督「親鸞・白い道」87など、新人・中堅監督の作品に多く出演する。90年代以降は脇役で存在感を発揮。錦織良成監督「白い船」02ではヒロインの母親、黒木和雄監督「美しい夏キリシマ」03では戦争で精神のバランスを崩していく少年の叔母、哀川翔主演の「デコトラの鷲(しゅう)」シリーズ03~08ではトラック運転手の溜まり場になっている食堂の女将、日向寺太郎監督のデビュー作「誰がために」05では主人公の母親役を演じた。テレビドラマは、73年のTBS『風の中のあいつ』で初出演以来、NHK『岩窟王』79、『立花登・青春手控え』82、『大仏開眼』『チャンス』10、テレビ朝日『赤穂浪士』79、『花吹雪女スリ三姉妹』88~91、TBS『白昼の死角』79、『夜明けのタンゴ』80、『白き牡丹に』82、『赤い指』11、日本テレビ『名もなく貧しく美しく』80、フジテレビ『はるちゃん3』99など多数がある。