北海道川上郡標茶町の生まれ。父の仕事の関係で釧路市など道内でいくつか転居したのち、小学生の頃に上京。相模原市立大野南中学校在学中に大映のスチールマンにスカウトされて、1970年、中学卒業と同時に大映に入社。同年8月、帯盛迪彦監督「高校生ブルース」でいきなり主演デビューする。当時は本名の“関根恵子”の名で活動していた。「高校生ブルース」は女子高生の妊娠を描いた作品で、ヌードなど大胆なシーンも多く話題を集める。同年、臼坂礼次郎監督「おさな妻」では、女子高生ながら母・妻・学生の3つの顔を持って生きる少女を演じ、ゴールデンアロー賞新人賞を受賞した。これらの作品は、10代の少女が愛と性の問題に悩み傷つきながら生きていく姿を描いた“レモンセックスシリーズ”という大映の人気レーベルとなる。以後も、帯盛監督「新・高校生ブルース」70、「高校生心中・純愛」71、増村保造監督「遊び」71、湯浅憲明監督「樹氷悲歌(エレジー)」「成熟」71などに続けざまに出演。肝の座った演技派美少女として期待されたが、71年12月に大映が倒産。翌72年に東宝に移籍する。その72年、東宝制作の日本テレビ『太陽にほえろ!』にレギュラー出演。彼女が演じたシンコ役は松田優作演じるジーパン刑事の恋人となり、『ジーパン・シンコ、その愛と死』などドラマティックなエピソードが作り上げられていく。一方、映画では熊井啓監督「朝やけの詩」73で再び注目を浴び、以後も浦山桐郎監督「青春の門」75などの話題作、増村監督「動脈列島」75などの社会派作品に出演。演技の奥行きも深めながら順調に活躍しているように思われたが、77年に自殺未遂騒動を起こしたのち、79年には西武劇場『ドラキュラ』の舞台公演中に、作家・河村季里との恋愛問題などで失踪するスキャンダルを起こしてマスコミから叩かれ、以後、芸能活動を休止する。80年、半年間の謹慎ののち復帰会見を開き、日本テレビのドラマ『女たちの他国・愛と炎の山河』、テレビ朝日『華麗な殺しの三重奏』で女優復帰。山本薩夫監督「アッシイたちの街」81で映画にも復帰すると、舞台演出家・蜷川幸雄が古典『四谷怪談』を大胆に解釈した監督第2作「魔性の夏・四谷怪談より」81にも出演。夫・伊右衛門(萩原健一)に裏切られ殺される悲劇の妻・お岩を切なく演じた。82年には、ピンク映画出身の高橋伴明が監督した初の一般映画「TATTOO[刺青]あり」で、宇崎竜童演じる主人公が破滅の道に進んでいくきっかけを作る元恋人役を演じた。ここで出会った高橋と同年6月、結婚。翌年より芸名も“高橋恵子”(のち惠子に改める)とし、その後はしっとりした大人の女性を演じることが多くなっていく。88年、夫の監督によるサスペンス「DOOR」では、勧誘に来るセールスマンに脅かされる主婦を演じ、以後も高橋伴明とは「獅子王たちの夏」91、「セラフィムの夜」96、「大いなる完(ぼんの)」98、「禅/ZEN」08など要所で脇を固め、二人三脚の関係を築いていく。その間もテレビドラマは、NHK大河ドラマ『徳川家康』83、『信長』92、『葵・徳川三代』00、『武蔵/MUSASHI』03や、フジテレビ『過ぎし日のセレナーデ』89、日本テレビ『麻酔』94など多数に出演していくが、舞台からは長く遠ざかり、復帰したのは実に18年ぶりの97年、蜷川幸雄演出『近松心中物語・それは恋』。一度、舞台に穴を開けた者はなかなか復帰できないという定説を覆し、恋に命をかける遊女・梅川を坂東八十助(現・三津五郎)相手に激しく演じた。以後は舞台活動も多くなり、鐘下辰男演出『新・地獄変』『藪の中』『マクベス』、蜷川演出『近代能楽集・弱法師』『ハムレット』『天保十二年のシェイクスピア』、野田秀樹演出『キル』『ザ・キャラクター』、水谷幹生演出『細雪』など多数の作品に出演。2001年の『弱法師』では、ロンドン・バービカン劇場の舞台も踏んでいる。02年の『雁の寺』『藪の中』で読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。04年の『山ほととぎすほしいまま』『藪原検校』『ハムレット』では朝日舞台芸術賞、秋元松代賞を受賞している。一方、近年は再び映画での活躍も目立ってきており、07年の近藤明男監督「ふみ子の海」では、主人公のふみ子に按摩の技術を教える笹山タカ役。盲目ながら凛と生き、ふみ子を厳しく育てる女性を演じて、毎日映画コンクール女優助演賞を受賞した。09年の園子温監督「ちゃんと伝える」では、病に侵された夫(奥田瑛二)を慈しみ、夫と息子の男同士の関係も暖かく見つめる妻であり母であるいずみを演じる。病院のベッドで添い寝する仕草が愛おしい。翌10年に毎日映画コンクール田中絹代賞を受賞。11年も飯島敏宏監督「ホームカミング」や、「ふみ子の海」の近藤監督と再び組んだ「エクレール・お菓子放浪記」が相次いで公開された。