愛知県春日井市の生まれ。本名・安藤豊明。春日井市議会議員だった父の関係から、明治学院大学法学部在学中より丹羽兵助代議士の秘書をつとめ、その後、高校の先輩で同郷の俳優・天知茂の付き人になる。1976年、日本テレビの子供向け特撮番組『円盤戦争バンキッド』で主人公・天馬昇に抜擢され、テレビドラマにデビュー。当時の芸名は“奥田英二”だった。その後はしばらく役に恵まれず、さまざまな職を転々。家賃が払えずにアパートから夜逃げし、3カ月間、代々木公園で野宿生活をしたこともあったという。転機となったのは79年、映画デビュー作となった藤田敏八監督「もっとしなやかにもっとしたたかに」で、ヒロインの森下愛子に翻弄される男を好演。続く東陽一監督「もう頬づえはつかない」では、桃井かおりと同棲する大学生を気負わずに演じて注目を浴びる。以後、多くの映画で役がつくようになり、芸名を“瑛二”に改名。本格的にテレビドラマにも進出し、81年のNHK銀河テレビ小説『愛・信じたく候』に始まって、『憤激の恋』82、『とおりゃんせ』82、『宵待草』83、さらには大河ドラマ『徳川家康』83の松平勝隆役、大型時代劇『宮本武蔵』84の本位田又八役など、NHKのドラマに立て続けに出演して全国的に知名度を高める。その後は、TBS『金曜日の妻たちへⅢ・恋におちて』85、『男女7人夏物語』『金曜日には花を買って』86といったヒットドラマに出演し、トレンディ俳優のはしりとして女性ファンを獲得する。だが、本人は映画へのこだわりが強く、86年には、熊井啓監督が遠藤周作の同名小説を映画化した「海と毒薬」に主演。太平洋戦争末期、米軍捕虜の生体実験を行なったふたりの医学研究生を通して、戦争の名の下に人間性が失われていく恐怖を描いた問題作で、奥田は良心の呵責に苦しむ医学生・勝呂を見事に演じた。同作で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。熊井監督とはさらに「千利休・本覺坊遺文」89、「式部物語」90、「ひかりごけ」92、「深い河」95、「海は見ていた」02で連続してコンビを組み、「千利休」では日刊スポーツ映画大賞主演男優賞、「深い河」では日本映画批評家大賞男優賞を受賞している。また、94年には神代辰巳監督の遺作となった「棒の哀しみ」に主演し、平凡な中年やくざの狂気と哀しみをリアルに演じて、キネマ旬報賞、ブルーリボン賞、毎日映画コンクール、ヨコハマ映画祭など多数の主演男優賞に輝いた。90年代の奥田は、ほかにも「極道記者」シリーズ93~96や「恋極道」97、「皆月」99などの望月六郎監督作品で、さまざまなタイプのアウトロー中年を表現していった。一方で榎戸耕史監督「ありふれた愛に関する調査」92では企画も兼ね、映画製作へ意欲を燃やし始める。自ら映画監督になろうと一念発起して基礎から映画作りを学び、48歳で助監督を経験。2001年、50歳で念願の監督デビュー作「少女/an adolescent」を発表する。第2作「るにん」04を経て、緒形拳を主演に迎えた第3作「長い散歩」06は、モントリオール世界映画祭でグランプリ、国際批評家連盟賞、エキュメニック賞の三冠に輝いた。俳優業も、伊藤俊也監督の「ロストクライム・閃光」10で三億円事件の真相を追うベテラン刑事を演じるなど、近年は大人の渋みを増した演技者として円熟を迎えている。テレビドラマの出演作はほかに、NHK『独眼竜政宗』87、『花の乱』94、『ひまわり』96、『北条時宗』01、『慶次郎縁側日記』04~06、『どんど晴れ』07、『白洲次郎』09、『チェイス・国税査察官』10、『テンペスト』11、TBS『海岸物語・昔みたいに…』88、フジテレビ『拝啓、父上様』07、『風のガーデン』08、『魔術はささやく』11、テレビ朝日『警官の血』09、『宿命1969 ─ 2010/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』10、WOWOW『ビート』11など多数がある。79年に結婚したエッセイストの妻・安藤和津との間に二女があり、長女の安藤モモ子は奥田の監督作で助監督を経験したのち、10年に奥田も出演した「カケラ」で映画監督デビュー。次女・安藤サクラは奥田の監督作「風の外側」07に主演したのをきっかけに、園子温監督「愛のむきだし」09、大森立嗣監督「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」10などで個性派若手女優として活躍している。