石川県金沢市で生まれ、奈良県桜井市で育つ。本名・大森宏。早稲田大学文学部哲学科を中退後、舞踏家の土方巽に師事し、舞踏の鍛錬を積む。1964年、唐十郎と劇団状況劇場を設立。『腰巻お仙・義理人情いろはにほへと篇』67などで、唐が提唱する“特権的肉体論”を体現。72年には独自で舞踏集団“大駱駝艦”を旗揚げし、“天賦典式”と銘打つスケール豊かな様式で舞踏評論家協会賞を5度受賞するなど、国内外で高く評価される。映画は、大和屋竺監督「荒野のダッチワイフ」67、劇中劇で当時の麿の活躍が窺える大島渚監督「新宿泥棒日記」69などを経て、中平康監督「闇の中の魑魅魍魎」71では、残酷な芝居絵で知られる幕末の異端の絵師・絵金を快演。絵金がモチーフの大駱駝艦公演『トナリは何をする人ぞ』96は、林海象監督「ちんなねえ」97でも取り上げられた。その後も、鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」80、「陽炎座」81などで異彩を放ち、89年の阪本順治監督「どついたるねん」では、元チャンピオンのボクサーの復活をサポートするジムの会長を人間味豊かに好演して、イメージを一新。以降も、母親捜しの旅をする少年のトラウマとなる変質者を怪演した北野武監督「菊次郎の夏」99、やくざの親分役で瞬時にインパクトを放つクエンティン・タランティーノ監督「キル・ビル Vol.1」03、女子プロレス界の裏表を知り尽くした重鎮を味わい深く好演した小松隆志監督「ワイルド・フラワーズ」04など、引く手あまたの活躍を続ける。テレビドラマの出演も多い。長男の大森立嗣は、麿も出演した2005年の「ゲルマニウムの夜」でデビューした映画監督、次男・大森南朋は俳優として活躍し、立嗣が監督した「まほろ駅前多田便利軒」11には、麿、南朋がともに出演している。