東京市渋谷区千駄ヶ谷(現・東京都渋谷区)の生まれ。本名・野平香純(かすみ)。父・明義は飲食業、母・和子は戦前の東宝女優・江波和子。弟がふたりいる。宝仙学園中学から同高校に進み、在学中の1959 年、大映の第13 期ニューフェイスとして入社。高校を2年で中退した60 年に「明日から大人だ」でデビューする。この年、10 数本の映画に出演したが、その中の市川崑監督「おとうと」での看護婦役が印象に残る。当時から鋭角的なマスクは個性的すぎて、デビュー後4~5年間の役柄は若尾文子、野添ひとみなどが演じるヒロインの純情ぶりを引き立てる悪女 や情婦役が多い。ようやく彼女の個性が注目を集めるようになったのは65 年度の製作者協会新人賞(現・エランドール賞)を受賞し、怪我をした若尾文子の代役として「女の賭場」66 の主役を射止めてからだ。女賭博師・沢井アキを和服姿で演じたクールなエロティシズムは日本の女優にはない西欧的な美貌と、巧妙なサイの扱いが話題になった。翌67 年の「女賭博師」に続いて「女賭場荒し」「三匹の女賭博師67、「関東女賭博師」68 が連作され、いずれも大ヒットを記録。「女賭博師乗り込む」からは、大滝銀子こと“ 昇り竜のお銀” が定着する。このシリーズは「女賭博師乗り込む」から「新女賭博師・壷ぐれ肌」71 まで12 本、「女の賭場」からの前哨的な作品5本を加えると17 本に及ぶ大シリーズとなった。71 年、大映の倒産とともにフリーになり、東宝「二人だけの朝」「出所祝い」71、東映「昭和おんな博徒」「木枯し紋次郎」72 に出演、いずれも“ 女賭博師” のイメージを引き継いだもので大した話題にはならなかったが、斎藤耕一監督のATG 作品「津軽じょんがら節」73 で女優としての新生面が開ける。雪景色と荒波の故郷津軽に恋人を連れて帰ってきた酒場女・イサ子。東京で身についた都会性のために漁村では受け入れられないヒロインの哀しみは、彼女の特色である日本人羽離れした美貌と肢体をより際立たせた。これでキネマ旬報賞女優賞を獲得し、大衆映画のヒロインから演技派への転身に成功する。その後、再び斎藤監督の松竹映画「再会」75 で野口五郎の姉をしっとりと演じ、鈴木清順監督の「悲愁物語」77 ではスターに憧れる平凡な主婦の屈折した感情を好演している。以降も、深作欣二監督「赤穂城断絶」78、降旗康男監督「日本の黒幕(フィクサー)」79、横山博人監督「純」80、村野鐵太郎監督「遠野物語」82、保坂延彦監督「愛しき日々よ」85、伊藤俊也監督「花園の迷宮」88、森田芳光監督「悲しい色やねん」88、君塚匠監督「喪の仕事」91、勅使河原宏監督「豪姫」92、長崎俊一監督「ナースコール」93、梶間俊一監督「集団左遷」94、手塚眞監督「白痴」99 などから、近年の阪本順治監督「KT」02、同「行きずりの街」10、及川中監督「吉祥天女」07、佐藤東弥監督「ごくせん THEMOVIE」09、富永まい監督「食堂かたつむり」10、和泉聖治監督「相棒・劇場版II /警視庁占拠!特命係の一番長い夜」10 に至るまで、多数に助演している。テレビドラマの出演作には、TBS『ザ・ガードマン』65、『土曜日の虎』66、『Gメン'75』78(準レギュラーで津村冴子警部補)、『眠れない夜をかぞえて』92、『あなたの人生お運びします!』03、『波の塔』06、『佐々木夫妻の仁義なき戦い』08、『冬のサクラ』11、NET(現・テレビ朝日)『非情のライセンス』73、『破れ傘刀舟・悪人狩り』74、日本テレビ『太陽にほえろ!』73、『桃太郎侍』78、『野望の国』90、『けものみち』91、『ごくせん』08、NHK『元禄太平記』75、『春の波涛』85、『ちりとてちん』07、『離婚同居』10、フジテレビ『新・座頭市』77、『ミセスシンデレラ』97、『大奥・華の乱』05、『今週、妻が浮気します』07、『不毛地帯』09、テレビ東京『それからの武蔵』81、テレビ朝日『チェンジ!』98 などがある。2018年10月27日東京都内の病院にて逝去。享年76歳。